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大前研一メソッド 2020/04/13

米露中の指導者たちの新型コロナ対策



大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

新型コロナウイルスが世界に蔓延し、世界全体の感染者数が4月13日、170万人を超えました。感染者数が最も多いのは米国で55万人以上で死者は2万人以上です。このうち、ニューヨーク州だけで19万人以上が感染し、9000人以上が死亡しています。

米国の感染者数は、最初に感染が拡大した中国の8万人以上の数字の7倍に迫る数字にまで増えました。新型コロナウイルスに対する世界の指導者たちの対応はさまざまです。米国とロシアと中国の対応をBBT大学院・大前研一学長に聞きました。

【資料】Tracking Covid-19 cases in the US(最終アクセス:2020年4月13日)
https://edition.cnn.com/interactive/2020/health/coronavirus-us-maps-and-cases/

場当たり的な対応のトランプ大統領に、米国は迷走中

新型コロナウイルスの米国の感染者数が、これまで最多だったイタリアや中国を上回った。死者数もこれまで最多だったイタリアを上回った。当初、「大した問題ではない。暖かくなれば、ウイルスは消え去る。すべてのことはアンダー・コントロールだ」と豪語していた米国のドナルド・トランプ大統領の言動も迷走している。

イースターまでに、という安全宣言も今では理由もなく「6月までに」と延びた。理詰めで指導力を発揮し始めているニューヨーク州のクオモ知事と、腰だめででまかせをのたまうトランプ氏の一騎打ちが民主党の候補者選びよりも全米の注目を集めている。

トランプ氏は感染が急拡大している東海岸のニューヨーク、ニュージャージー州とコネティカット州の一部について、2週間程度の強制的な移動制限、つまり事実上の封鎖措置の検討も明らかにした。

これに対してクオモ知事は「医療的観点からも何をしようと考えているのか不明。これは連邦政府による州への宣戦布告であり、違法だ。都市封鎖は中国・武漢で行われたこと。ここは中国ではないし、戦時中でもない」と猛反発されると、その日の夜に「隔離は必要ない」と一転した。相変わらず、場当たり的なトランプ氏だ。

一方、1950年の朝鮮戦争下に成立した「国防生産法」(大統領権限で非常時に民間企業に物資の調達や増産を指示できる)まで持ち出して、自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)に対し、患者の治療に必要な人工呼吸器を生産するよう命令した。「連邦政府がカリフォルニアに送った呼吸器は性能が悪くて使い物にならない」と言われているときに場違いのGMを選ぶ、というセンスも不評を買っている。

日本と同じ規模の感染拡大状況だが、プーチン大統領の号令で、4月いっぱい全土で休業

ロシアは感染が確認された人は4月13日時点で1万人以上となり、死亡者が約100人に達している。日本とだいたい同じくらいの感染拡大状況であるにもかかわらず、ロシアは日本とは比べ物にならない厳戒態勢を敷いている。

ウラジーミル・プーチン大統領は3月30日から4月30日まで国内のほぼすべての産業を休止し、有給の非労働期間にする大統領令を出し(当初は4月5日までの1週間の予定だった)、国民向けにテレビで大演説を行った。私はずっと視聴していたが、プーチン氏、今回は結構、真面目に話をしていた。

「ロシアはいまのところ、新型コロナウイルスに対処できているが、欧州のように感染拡大したら大変なことになる」ということを細かい数字や金額を出して語っていた。演説の中では、彼のペットプロジェクト(追求する目標)である憲法改正をめぐる投票の期日も延期する発表した。

長い演説だったが、「いま一番安全なのは家にいることだ」とソフトに語りかけていた。国民からすると、少し思慮深いプーチンさんに出会ったと感じたのではないか。今回の演説を聞いていると、やっぱりこの人は役者だなと思う。

ただ、「欧州などで起きていることは、近い将来、われわれにも起きるかもしれない。『自分は関係ない』と思わないでほしい。そういうロシア的な態度はやめてほしい」という言葉については、「鏡に向かって言ってくださいね」と思ったが。ロシアではプーチン氏がライオン300頭と熊300頭をモスクワに放った、というのが話題になっている。出歩いたら襲われるぞ! というロシア流の冗句らしいが。

武漢の封鎖を解除するも、北京への移動は制限

中国・湖北省は武漢市の封鎖措置を4月8日に解除した。1月23日に始まった封鎖から2カ月半が経過し、沈静化に一定のメドがついたと判断したもの。健康証明用アプリ「健康コード」で最も安全なレベルと判定されれば、市外への行き来が可能になる。

しかし、省の保健当局は、陽性判定でも未入院の人、無症状の人は感染者に数えていない実態を認めている。元々、イタリアにしてもイランにしても、日本の奈良のバスの運転手にしても、武漢から来た人が発生源だということは明白である。

中国政府としては感染抑え込みの成果と強調したいのだろうが、4月8日以降も武漢から出てきた人に対し、相当警戒しないといけないだろう。その証拠に武漢市から北京市への移動は制限している。武漢と北京を結ぶ国内国空路戦へ直行便の再開を見送り、武漢市から北京市に入った場合、2週間の隔離が求められる。

※この記事は、『大前研一のニュース時評』2020年4月5日を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセッツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学教授。