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編集部posts 2020/05/01

いいオンライン学習の選び方<第2回>いい講義=いい学習ではない



執筆:北憲祐(ビジネス・ブレークスルー大学院教務部 部門長)
編集/構成:mbaSwitch編集部

皆さん、こんにちは。
ビジネス・ブレークスルー大学院教務部の北憲祐です。

前回はオンライン学習に必要な三大要素と、その一つである認知的存在感(Cognitive Presence)の説明を通して、どうやって思考力を深めるかということについてご説明しました。

今回は、残り二つの教授的存在感(Teaching Presence)と社会的存在感(Social Presence)についてお話したいと思います。

1.学習に最も重要なのは「講義」ではなく「課題」

講師が多くの学生に対して一方的に講義をし、学生はただそれを聞いているだけ、という教育スタイルは時代遅れだということは昨今良く言われています。しかしながら、多くの方がこの方式での教育を受けて育ってきたためか、はたまた受講生は聞いているだけで楽だからなのか、未だに学校や企業研修では「講義」が中心になっています。

教授的存在感(Teaching Presence)は、授業設計や講師の指導に関するものです。
遠隔教育の研究者であるランディ・ギャリソンによると、教授的存在感(Teaching Presence)とは、学習者個人にとって価値ある教育を提供できる学習のデザイン・ファシリテーション・指導を指します。

じゃあこの教授的存在感(Teaching Presence)の視点からの良い学習とはどういったものなのか、ということですが、下のフレームワークはとても参考になると思いますので少しご紹介します。

このフレームワークは、学習課題(Learning Task)、学習教材(Learning Resources)、学習支援(Learning Support)の3つの構成要素から学習をデザインすることを目的としています。ここで注目していただきたいのが、講義(Lectures)は学習教材(Learning Resources)の一つにすぎないということです。ここが従来の教育と大きく違うところですね。

先生の講義はあくまでも学習のための教材であって、いい講義=いい学習とは必ずしもならないという考え方です。

更に、この学習課題(Learning Task)、学習教材(Learning Resources)、学習支援(Learning Support)をどう組み合わせてデザインするかを考えるときには、以下のフレームワークが有効です。

このフレームワークでは、まずは対象とする学習成果(Intended Learning Outcomes)を設定し、そのために必要な学習課題(Learning Tasks)を考えます。そして、その学習課題に取り組むために必要な学習教材(Learning Resources)と学習支援(Learning Supports)は何であるか、という考え方で講義を作ることになります。

この考え方は、「何を教えたいか」という講義内容をまず初めに考える従来の授業とは全く逆のアプローチですね。前回、思考力を高めるには『アウトプット』を出すことが重要とお伝えしたと思いますが、アウトプットを出すことを目的とした学習課題を中心に学習をデザインすることは、とても合理的で当然のことではないかと思います。

2.学ぶうえでコミュニティは大事

これまで認知的存在感(Cognitive Presence)と教授的存在感(Teaching Presence)について説明してきましたが、最後に3つ目の重要な要素である社会的存在感(Social Presence)について説明したいと思います。

ギャリソンによると、学習者同士がオープンなコミュニケーションができてグループとして団結できること、またお互いに安心して感情が表現できるような場を作ることが重要で、そういった学習環境に関する要因を社会的存在感(Social Presence)と言います。

例えば、学習者同士で悩みを共有できるような場や、肩書やバックグラウンドを忘れてお互いを尊重しあえるようなコミュニティと文化がある、また「同じ釜の飯を食った」といった同胞・仲間のような情緒的な価値を共有できるようなコミュニティですね。

オンライン学習の場合、この社会的存在感(Social Presence)を意識的に作っていく必要があります。
多くの方はオンライン学習と聞くと一人でコツコツやっていく孤独なものをイメージするかもしれませんし、実際に巷にあるオンライン学習の大半は、映像を好きな時に見られるだけ、というものかと思います。確かにビジネスの用語や理論を面白くかつ分かりやすく説明したり、最新ビジネストレンドや成功した企業・経営者を紹介したりと、とても素晴らしいEラーニング教材はたくさんあります。

しかしこれだけでは、途中で断念してしまう方も多いと思いますし、他の方から得られる学びということを考えるとあまり効果的とは言えません。

米Amazonの2017年ベスト・サイエンス書にも選ばれた書籍の日本語訳である『Learn Better -頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』(アーリック・ボーザー著/英治出版)という書籍のなかでも、社会的ネットワークは学習者のモチベーションを高める要因の1つであり、また「知的努力には伝染性がある」と述べられています。

一緒に学ぶ仲間を持つことは学習を継続し、深めていくうえでとても重要なのです。

最近では勉強の進捗などを仲間と共有できるアプリなども多く開発されていますし、学校などであれば同級生や先輩・後輩など一緒に学ぶ仲間を得ることができます。

是非皆さんもオンライン学習に限らず、勉強をするときは是非『Social Presence(社会的存在感)』を意識されると良いかと思います。

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北 憲祐(きたけんすけ)

ビジネス・ブレークスルー大学大学院教務部 部長
関西学院大学商学部卒業。リーズ大学MBA修了。大手損害保険会社の営業、大阪の私立大学のオープンイノベーション推進担当を経て2016年に㈱ビジネス・ブレークスルーに入社。ビジネス・ブレークスルー大学大学院及びBOND University-BBT Global Leadership MBA Programのカリキュラム開発、受講生の学習及び学生生活支援、学校経営・ガバナンス等の業務に従事。