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大前研一メソッド 2020/05/18

時価総額でネットフリックスがウォルト・ディズニーを抜く



大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

米国のエンタメターテインメント界の二大巨頭である動画配信大手のネットフリックスの株価が対象的な動きをしています。

ネットフリックスは市場全体の下落基調の動きに逆行し、株価は年初来で約10%上昇しています。ウォルト・ディズニーは市場全体の下げ率を上回り、2020年末の3分の2ほどの株価に落ち込んでいます。株価の動きで明暗を分けているネットフリックスとウォルト・ディズニーについてBBT大学院・大前研一学長に聞きました。

ネットフリックスは「巣ごもり需要」を取り込み、新型コロナ禍の勝ち組

ネットフリックスは2020年4月21日、世界の有料契約者数が2020年3月末時点で1億8286万人となり、2019年12月末時点から1577万人(9%)増えたと発表した。市場予想の約2倍程度伸びたという。

地域別では欧州が440万人増と最も大きく伸びた。アジア・太平洋は360万人増、中南米は290万人増、北米は231万人増。すべての地域で増加数が伸びた。

新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大し、外出自粛が続く中、自宅でオンライン動画を鑑賞する「巣ごもり需要」が高まったことが要因である。

2020年1~3月期決算も増収増益。売上高は前年同期比28%増の57億6769万ドル(約6200億円)、純利益が2.1倍の7億906万ドル(約756億円)。投資家から新型コロナ禍の勝ち組の1つとみられている。

今後も、映画館が閉鎖されていることで、配給会社がネットフリックスでの配信を決める例も出ている。ただ、自社の手掛ける映画の撮影が中断するなど、新作の配信に関しては不安もある。4~6月の加入者の伸びは750万人と予想しているが、外出制限が解除されれば、成長は鈍化すると見込んでいる。

動画配信市場は、ネットフリックス、ウォルト・ディズニー傘下の「ディズニー+(プラス)」、アマゾン・ドット・コムの「プライムビデオ」などの競合サービスが入り乱れ、激戦となっている。2020年5月には通信大手AT&T傘下のワーナーメディアが、アップル端末で視聴できる「HBOマックス」の配信を開始する。視聴者が伸び続けるのかもしれないが、動画配信市場における競争激化で契約料が抑制される可能性がある。

ウォルト・ディズニーはテーマパークや映画館、スポーツ専門チャンネルに足を引っ張られる

2019年11月に米国やカナダなどでサービスを開始したディズニープラスは、初日だけで登録者数が1000万人を突破し、ネットフリックスの解約率は急激に高まった。しかし、新型コロナウイルスの流行により、解約率は低下傾向にある。

外出自粛で「何か見たいな」となったときに、まだまだネットフリックスが一番プログラムが豊富だ。米国などではシリーズ物の「タイガーキング」や「ラブ・イズ・ブラインド」が人気を呼んだ。

一方、ウォルト・ディズニーやアマゾンプライムは、これから「見放題」などのサービスを充実させようと思っていたタイミングで新型コロナが拡大し、準備不足もあった。ウォルト・ディズニーは2020年2月にボブ・アイガー最高経営責任者(CEO)が退任し、テーマパーク部門を率いるボブ・チャペック氏が昇格という交代劇も影響した。

2020年4月16日、ネットフリックスの時価総額は1940億ドル(約20兆7000億円)になり、ウォルト・ディズニーの時価総額約1840億ドル(約19兆6000億円)を上回った。

ウォルト・ディズニーはカリフォルニアのディズニーランドとフロリダのディズニーワールドは、3月12日以降休園を続けており、再開時期は未定である。東京のディズニーリゾートも2月末から休園している。野球、アメリカンフットボール、バスケットボールの人気プロスポーツが中断している中、ウォルト・ディスニーが配信するスポーツ専門チャンネルのESPNは昔の試合を流すしかありません。

ウォルト・ディズニーは足元の環境で失うものが多く、2020年1~3月期の純利益は前年同期比の92%減の4億6000万ドル(約490億円)と業績の落ち込んだ。2020年1~3月期の売上高は21%増の180億900万ドルとネットフリックスの3倍以上の規模だが、新型コロナ禍が時価総額に反映された格好である。

※この記事は、『大前研一のニュース時評』 2020年5月9日 を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学教授。