MBAダイジェスト 2020年6月4日

Steps to Leading Globally(1)世界の共通言語、グローバルリーダーシップとは?

『MBAダイジェス』シリーズでは、国内初・最大級のオンラインMBAである「BBT大学院」、ならびに2つの国際認証を持つ「BOND-BBT MBAプログラム」の修了生が、両校で学ぶMBA科目のエッセンスをまとめ、わかりやすく紹介していきます。将来的にMBAの取得を検討している方や、MBAの基礎知識をインプットしたい方はご活用ください。



執筆:岸原直人(BBT大学院MBA本科修了、パナソニック株式会社 デジタルマーケティング推進室 課長、アプライアンス社事業開発センター ゲームチェンジャーカタパルト Versatile Player)
対象科目:Steps to Leading Globally(Eric Francis 教授)

はじめに

国内の少子高齢化が進む中、日本企業はこれまで以上にグローバルビジネスでの成長を目指さねばなりません。単一言語単一民族の日本と異なり、多種多様な文化、人材から構成されるグローバルなビジネス環境においては、自らがリーダーシップを発揮し続け、状況を好転させていく必要があります。

しかし「リーダーシップ」を正しく発揮できている企業、人材は決して多くはありません。ハーバードビジネスレビュー誌による世界のグローバル企業への調査によると、7割以上の企業が自社のリーダーシップに課題を持っているという結果も出ています。グローバルリーダーシップはビジネス界では共通言語であるものの、まだまだ正しく実行されていないのが実態です。

今回からご紹介する「Steps to Leading Globally」では、講義を受けた私が、実務でも役立たせられている点を特にクローズアップしたいと思います。

◆ ステップ1: リーダーシップの定義
◆ ステップ2: リーダーシップの開発
◆ ステップ3: グローバルリーダーシップの発信

のステップを5回に分けて、グローバル環境におけるリーダーシップの理論を正しく理解し、組織の中で自分の影響力を高め、発揮していく方法を順に紹介していきましょう。

ステップ1:リーダーシップの定義 その(1) ~マネジメントとリーダーシップは異なるもの~

日本では未だにマネジメントとリーダーシップを同一視している感があります。しかしこれには明確な違いがあります。

マネジメントの特徴が「短期的、リスクを避ける、標準化、改善、管理・統制・戦術中心」であるのに対し、リーダーシップは「長期的、リスクを取る、イノベーション、鼓舞・動機付けする、戦略そのもの」と言えます。

その違いについて、 ピーター F. ドラッカー氏は、

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Management is doing things right. Leadership is doing the right things.
(マネジメントとは事を正しく行うことであり、リーダーシップとは正しい事を行うことである。)
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と語りました。決められた事を正しく行うのがマネジメントですが、グローバルなビジネス環境下は答えのない世界です。自ら「答え・正しい事」を創り出す必要があります。それがリーダーシップです。

ミッション・ビジョン・バリュー(MVV):リーダーシップの具現化

あなた自身のリーダーシップを具現化し、組織に浸透させ、共通の目的に向かって理解し行動できるようにするために必要となってくるのが、 「ミッション・ビジョン・バリュー」です。では、まずミッション、ビジョンとは何でしょうか?

ここに、高さ数千メートルはあろうかという山脈を臨む登山家が写った写真があるとします。この登山家にとってのミッションは山に登ることです。すなわち

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Why you are working; the purpose of your career
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というあなた自身、組織の目的・使命を明確化したものがミッションです。

次にこの登山家にとって遠くに見える山脈の頂上、それが目指すべきビジョンです。
ビジョンは

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What you want to become; A picture of what future success looks like
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つまり、あなたがどの山を目指すのか=何を目指すのか; 目指すべき成功の姿がビジョンです。

最後に バリューです。バリューは

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How you want to act in achieving your goal
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ゴールを達成するためにどのように行動するかを示すこと、あなたの価値観と言えます。Valueには様々な要素、段階がありますが、あなたにとって最も重要なものを3つ程選ぶのが一般的です。

Walmartに見る優れたミッション・ビジョン

ではここで、実在する企業のミッション・ビジョンを見てみましょう。
世界No.1の流通業であるWalmartは、

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To give ordinary folk the chance to buy the same things as rich people
(中間層が、富裕層と同じ商品を購入できるようにする)
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ということをミッションに掲げています。そして、どの市場で、どの商品/サービスで成功するかを示すビジョンは

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To become the worldwide leader in retail
(世界の小売業のリーダーになる)
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ということを明確に示しています。こうしたミッション、ビジョンに基づき、同社はEveryday Low Priceを実現する独自の仕組みを構築した流通小売業として事業を続けています。

リーダーシップとは、ミッション・ビジョン・バリューとは何か、ヒントになりましたか? 一度ご自身の会社のミッション・ビジョン・バリューが何か調べてみて、今回学んだことと比較をしてみると良いでしょう。

次回は「ステップ1: リーダーシップの定義 その(2)」をご紹介します。

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岸原直人

BBT大学院本科 修了生
パナソニック株式会社
デジタルマーケティング推進室 課長
アプライアンス社事業開発センター ゲームチェンジャーカタパルト VersatilePlayer

1971年埼玉県所沢市生まれ
早稲田大学卒業後、松下電器産業株式会社(現:パナソニック株式会社)に入社。国内外営業・マーケティング、海外広報を経て、2012年から2015年まで米国地域統括会社でブランドマーケティングに従事。帰国後は本社経営企画での勤務後、2017年より新設されたデジタルマーケティング推進室で、グループ全体のデジタルマーケティング化を推進中。また2018年からは、「社内複業制度」を活用し、家電部門の新規事業創出組織であるゲームチェンジャーカタパルトに参画。

大学時代始めたアメリカンフットボールに今も夢中。米国勤務時代は、全世界最大規模のスポーツイベントと言われるスーパーボウルを、『一生の一度のチャンス』と捉え、1席数十万円のチケットを購入して観戦。また、現在も40歳以上のメンバーで構成される『シニアアメリカンフットボール』のチームに所属し、プレーを継続。アメフト以外でも、トレイルランニングに熱中。毎年複数の大会に参加している。また「トレーニングで街創り」というビジョンを掲げる『Daddy Pak Training』に所属し、日本初の都市型障害物レースイベントを行う等、社会起業にも活動の幅を拡大。大前学長の「やりたいことは全部やれ!」という教えをまさに実践している。

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