業界ウォッチ 2020年7月20日

教員のちょっと気になる「世界の超富裕層の資産額増減」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「世界の超富裕層の資産額増減」を取り上げてご紹介いたします。

新型コロナウイルスの影響への経済対策として、米国等を中心とした金融緩和策により、株式市場への資金が流れ込み、テクノロジー銘柄を中心とした株高傾向が続いているようです。これにより、米ハイテク企業創業者を中心とした超富裕層の資産がさらに増加しているそうです。

確かに、コロナ禍においては、外出禁止・自粛や、在宅勤務増加などによりオンラインを活用したサービスを提供する企業の業績や株価が好調なようです。米大手ITのGAFAMなども、さらに巨大化しているという報道も見かけます。

それでは、超富裕層の資産はどの位の規模で、年初からどの位増えているのでしょうか。テクノロジー系企業の創業者・経営者と、そうでない企業とで資産の増減に違いがあるのでしょうか。米国以外ではどういう国のどういう富裕層・人物の資産が増加しているのでしょうか。日本ではどうなっているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

米ブルームバーグ通信では、世界の超富裕層(ビリオネア)の純資産額と、年初からの資産増減額を算出し、1位から500位までのランク付けを行っています。この数字をベースに、上位富裕層の動きを見てみます。(2020年7月19日時点)

まず、資産額トップ10位の超富裕層の保有資産額と年初来の増減額を見てみます。トップは、Amazon CEOのジェフ・ベゾス氏で1760億ドルの資産を保有し、年初から614億ドル増となっています。次いで、Microsoft創業者のビル・ゲイツ氏(1170億ドル、42億ドル増)、仏LVMH会長のベルナール・アルノー氏(941億ドル、112億ドル減)、Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ氏(919億ドル、135億ドル増)と続きます。

トップ10位内に米国人は8名で、8名の保有資産は合計で7404億ドルで年初から1322億ドルの増加となっています。

米国以外の主な超富裕層を見ると、トップは仏LVMH会長のベルナール・アルノー氏(前述)で、次いでインドのリライアンス・インダストリーズ社会長のムケシュ・アンバニ氏(保有資産額716億ドル、130億ドル増)、フランスのロレアル創業者の孫にあたるフランソワーズ・ベタンクール・メイヤー氏(663億ドル、73億ドル増)、ZARAなどを展開するスペインInditex社創業者のアマンシオ・オルテガ氏(558億ドル、196億ドル減)と続きます。

日本のトップは、ファーストリテイリング会長の柳井氏で287億ドル(年初から20億ドル減)となっており、次いでキーエンス創業者の滝崎武光氏(239億ドル、32億ドル増)、ソフトバンク創業者孫正義氏(207億ドル、51億ドル増)となっています。

こうしてみると、米国を中心としたテクノロジー企業の経営者・創業者の資産増加が大きいことが分かります。反対に、ファッション・衣類・バッグ等の業種や、その他複合事業を行っている経営者・創業者は資産減少が大きくなっていることが分かります。

新型コロナによって、業績悪化・失業者が増加した業界や企業があるため、経済対策とした金融緩和をしたものの、その結果、コロナの影響で業績が好調な企業に資金が流れ、貧富の格差がさらに広がっている様子が分かります。

一方、いわゆるテクノロジー銘柄ではない小売流通のウォルマートの創業者の子息の資産は増加していることも分かります。ウォルマートは、アマゾンに対抗するために、ECだけでなく小売店舗に様々なデジタルツールを取り入れるなどして業績を伸ばしていることが要因になっているようです。

このように、超富裕層の資産が、企業の株価との関係が強いところを見ると、どのような業種・業態であっても、デジタル化に取り組んでいくことが重要だと言えそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)