大前研一メソッド 2020年7月27日

教員のちょっと気になる「国内ゲーム市場規模」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「国内ゲーム市場規模」を取り上げてご紹介いたします。

先日(7/9)、ゲーム総合情報メディア「ファミ通」が「ファミ通ゲーム白書2020」を発刊しました。同ゲーム白書は、国内外のゲーム業界が様々な角度から分析されています。

こうした白書では、昨年(2019年)の動きをまとめているため、市場規模統計など今年に入ってからの新型コロナウイルスの影響が含まれていないケースが多くなっていますが、この「ファミ通ゲーム白書2020」では、今年5月時点での20年以降の市場規模予測値が掲載されています。

確かに、新型コロナ感染拡大後、Nintendo Switchの需要拡大や「あつまれ どうぶつの森」の大ヒット等の変化があったため、コロナ禍後の市場規模がどうなるのかが気になっていました。

それでは、国内ゲーム市場はどのように推移し、コロナ禍以降の予測はどのようになっているのでしょうか。ハード、ソフト、オンラインの内訳はどのように変化しているのでしょうか。また、任天堂のようなコンソール型ゲームではなく、スマホゲームアプリなどのオンラインゲーム市場の主要企業の売上はどのように変化しているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

まず、国内ゲーム市場規模(家庭用ハード・ソフト、オンラインプラットフォームの合計)の推移を見てみます。2007年は約8650億円で、09年に約7760億円と落ち込みますが、翌年以降増加トレンドとなっており、19年に約1兆7300億円、21年には約1兆8500億円に達することが予想されています。

内訳をみると、家庭用ハードが07年には約3280億円でしたが、以降減少トレンドとなっており、16年には1170億円へと落ち込んでいます。17年にはNintendo Switchが発売されたこともあり、2000億円台に達しますが、以降は微減・微増トレンドとなっています。

家庭用ソフトを見ると、07年には約3760億円でしたが、そこから微減トレンドが続き、16年に約2270億円となりますが、以降は微増トレンドへと転じています。

オンラインプラットフォームを見ると、07年は約1600億円でしたが、そこから増加トレンドで、21年には約1兆3600億円となり、07年の約8.5倍にまで拡大しています。これらから、国内ゲーム市場はオンラインプラットフォームがけん引していることが分かります。

次に、主なゲームアプリ(オンラインゲーム)会社の売上高(当該セグメント分)の推移を見てみます。ここでは、コロナ禍以降の影響を見るために、四半期ベースの売上推移で、2020年第1四半期(20年3月期)までの推移を見てみます。

サイバーエージェントの推移をみると、15年第1四半期(15_Q1)は155億円でしたが、そこから概ね増加トレンドで、20_Q1には448億円となっています。mixiは、15_Q1が423億円でしたが、以降は増減を繰り返しながら、19_Q2に200億円となるなど、ざっくりみると減少トレンドとなっていました。DeNAは、15_Q1が298億円で、以降は概ね減少トレンドとなっています。これら3社は、20_Q1で売上が跳ね上がっており、新型コロナの影響があったことが読み取れます。

こうしてみると、Nintendo Switch、「あつまれ どうぶつの森」のヒットなどの要因があったとしても、新型コロナ禍後のゲーム市場を牽引しているのは、スマホゲームアプリを中心としたオンラインゲームだということが分かります。

ゲーム市場全体で、約1.8兆円という規模感を考えると、ゲームは大きな産業になっているとも言えます。しかも、オンラインゲーム市場規模と比較して、スマホゲームアプリ上位企業の売上規模が小さいことから、上位企業でもシェアが小さく、参入企業が多い市場だということが分かります。大きな産業ということであれば、ゲーム関連で何らかの参入機会・隣接領域の事業機会を探ってみてみるのも良さそうですね。

執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)