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大前研一メソッド 2020/09/01

ファミマとセブン、コンビニ海外展開における勝者は?



大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

コンビニエンスストア業界の成長モデルが行き詰まっています。日本経済新聞がまとめた2019年度のコンビニ調査では、店舗数が1981年度以降で初めて前年を割り込みました。2019年度の国内コンビニ店舗数は、比較可能な15社で5万8250店と2018年度比で0.5%減りました。

15社の全店売上高は11兆9240億円となり、伸び率は1.3%増と2010年度以降で最低を記録しました。売上高上位10社のうち5社が減収となり、ファミリーマート(エリアフランチャイズを含む)は0.4%減の3兆1617億円。過去5年で平均5%前後の増収を続けてきたセブン—イレブンも2.3%増の5兆102億円と、過去10年で最低の伸びでした。

【資料】コンビニ店舗数、初の減少 増収率は過去10年で最低(最終アクセス:2020年9月1日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63045330V20C20A8TJ2000/

これからのコンビニの成長戦略の一つが、海外展開です。動きのあるファミマとセブン−イレブンの海外展開についてBBT大学院・大前研一学長に聞きました。

ファミマの親会社の伊藤忠は、能力的にコンビニの海外展開に向いていない?

日経新聞に「ファミマ、アジアで苦境」と題する記事が載っていた。ファミリーマートがタイの合弁会社の出資を引き揚げたことに加え、中国では現地のパートナーとの訴訟が続いて撤退の可能性も浮上しており、ファミマの完全子会社化を目指す親会社の伊藤忠商事が反転攻勢のカギを握るとしている。

しかし、私は逆に、伊藤忠が関わっているからファミマの海外コンビニ事業が混乱しているのではないかと思っている。

伊藤忠はコンビニ以外の分野で中国中信集団=シティック(CITIC)グループ、タイのチャルーン・ポーカパン(CP)グループという、それぞれの国の最大のコングロマリットと組んで、いろいろな事業をやろうとした。しかし、CPグループはタイではセブン−イレブンと組んで、約1万2000店も展開、大成功している。

一方、ファミマは、タイの小売り最大手のセントラル・リテール・グループとの合弁会社を設立したものの、結局、その運営会社の持ち分49%を手放した。

中国でも台湾の食品会社の頂新グループと合弁会社を設立して展開してきたが、関係は悪化し、合弁会社を売却するよう訴訟を起こした。ファミマ側は「利益相反取引に関する情報が開示されず、長期にわたるライセンス使用料の未払いもあった」と主張している。頂新はインスタントラーメンの康師傅などの販売網が中国最大のネットワークとなっており、20%の株式を持つ伊藤忠を介してアサヒなど日本企業との関係も深い。

タイも中国もうまくいかない。両国での不手際は、伊藤忠の能力不足が露呈したものだ。中国のCITICグループ、タイのCPグループと1兆円単位のファンドで何か共通なことをやっていこうと派手にアドバルーンを上げておきながら、めぼしい成果は上がっていないし、少なくともCPはその重要な分野をセブン−イレブンと組んでいる。

伊藤忠がファミマにTOB(株式公開買い付け)を実施して完全子会社化するというのは、ニュース的には面白いかもしれないが、それ以前に伊藤忠は能力的にコンビニの海外展開には向いていないのではないか。

セブン、全米1万3000店をリアルとサイバーの接合接点に仕上げることができるか?

コンビニの海外展開の話をもうひとつ。セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、米石油精製大手マラソン・ペトロリアム傘下でコンビニを併設するガソリンスタンド部門「スピードウェイ」を買収すると発表した。買収額は約2兆2000億円である。新型コロナ感染拡大後では世界最大のM&Aとみられる。これについては、私は使い道を間違わなければうまくいくと思う。

セブン&アイHDは、2005年には米国のセブン−イレブンを完全子会社化して米国に約9000店を展開している。これにスピードウェイの約4000店を合わせると1万3000店と拡大してダントツ1位になる。ここをリアル空間とサイバー空間の接合拠点にし、サイバーで頼んだものをリアルでピックアップする——などいろいろ工夫すれば、1万3000店は大きなパワーになると思う。世界最大の小売業ウォルマートもリアルとサイバーを組み合わせてようやくうまくいき始めている。

ガソリンの需要は、今後、電気自動車の普及でどんどん少なくなっていく。その分、顧客のリクエストに応えるコンシェルジュサービスやeコマース(電子商取引)の補完は必要になってくる。これをうまく生かす上で、全米で1万3000の拠点を持つというのはプラスになる。日本でダントツのセブンが海外コンビニをさらに伸ばしていくのは、間違った戦略ではない。

※この記事は、『大前研一のニュース時評』2020年8月23日を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学教授。