マネジメントとビジネストレンドの知見を得るMBAメディア

タグから検索する

大前研一メソッド 2020/09/08

トランプ米大統領、再選のために郵便投票の妨害を画策

大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

トランプ米大統領、再選のために郵便投票の妨害を画策

米大統領選で、郵便投票の投票用紙の送付が開始されました。「用紙が届いたら郵便で投票し、次に投票所に行って投票してみるといい」——。

ドナルド・トランプ米大統領は2020年9月2日、再選を目指す大統領選での郵便投票を巡り、二重投票を呼び掛けたと毎日新聞が報じています。

「大規模不正が横行する」と批判してきた郵便投票における制度上の不備が存在することを強調する狙いですが、法律で禁じている二重投票による大規模不正を有権者に自ら呼びかけた形です。訪問先の南部ノースカロライナ州で地元テレビ局のインタビューで語りました。

【資料】
ドナルド・トランプ大統領、二重投票を奨励? 「郵便で投票し、次に投票所に行って」
https://mainichi.jp/articles/20200903/k00/00m/030/138000c

「自分の再選に不利」と考えている郵便投票を妨害するためなら、なりふり構わない行動をとるトランプ大統領——。「まだまだ波乱が予想される」とBBT大学院・大前研一学長は指摘します。

郵政公社総裁にトランプ支持者を就任させて郵便投票を妨害へ?

郵政公社総裁にトランプ支持者を就任させて郵便投票を妨害へ?

各世論調査で民主党候補ジョー・バイデン前副大統領はリードしているが、トランプ大統領がかなりハチャメチャなことをしている割に、支持率にそれほど差が開いていない。トランプ氏が最も嫌いな言葉は「ルーザー」(敗北者・負け犬)だ。まだまだ逆転か居残りの方法を考えているはずである。

その一つが、自分の再選に不利な郵便投票を阻止しようとしていることである。新型コロナの感染拡大を避けるため、今回の大統領選は郵便投票が急増する公算が大きいとみられている。

郵便投票に反対して、トランプ氏は全有権者に投票用紙を送る方法に対し、米国以外がでたらめな郵便物を挿入したり遅配の可能性もあると指摘し、「不正選挙になるか、結果が出ないかだ。選挙をやり直すことになる」と主張している。

郵便投票をめぐる与野党の対立では2020年6月、郵政公社の新たなトップに就任したルイス・デジョイ氏が就任したことで激しさを増している。デジョイ総裁の下、郵政公社は2020年7月下旬に各州の選挙管理委員会に書簡を送付し、郵便投票に否定的な立場であることが明らかになっている。

「投票を妨害しようとしている」という民主党の批判に対して、郵政公社のデジョイ総裁は全面的に否定し、上院の公聴会で「投票用紙の配送を最優先する慣習を継続する」と確約した。また、経費削減を目的とした事業改革を大統領選後に先送りして、遅配が起きないように配慮する姿勢を示した。

デジョイ総裁はトランプ氏と親しく、前回2016年の大統領選挙ではトランプ陣営に多額の献金もしている。民主党はトランプ氏の意向を踏まえて郵便投票を妨害するとの懸念を強めていて、「間違いなく期日に届ける」と約束させたわけだ。

さらに、民主党は新型コロナで打撃を受けた郵政公社に、最大で約2兆6000億円を緊急支援する法案を成立させ、郵便投票の確実な実施を図ろうとした。業務を円滑化させて、選挙関連の郵便を最優先するよう求める条項も盛り込んだ。

しかし、8月22日に下院がこの法案を賛成多数で可決したが、共和党が多数を占める上院では否決される見通しである。

グッドイヤーに対する不買運動をツイッターで呼びかけ

グッドイヤーに対する不買運動をツイッターで呼びかけ

郵便事業そのものを破壊してでも郵便投票を妨害したいトランプ氏は、さらにとんでもないことを言い出した。グッドイヤー製のタイヤの不買運動をツイッターで呼び掛けたのだ。

グッドイヤーの従業員がネットに投稿した画像に、同社が「米国を再び偉大に」などの政治的なスローガンの書かれた衣服を職場で身に着けることを禁止する方針を示した、というのが理由である。つまり、トランプ支持のTシャツを着ている人に対し、「着るのをやめろ」という通達をグッドイヤーが出したとされることに対して、頭にきたわけである。

しかし、グッドイヤーは日本のブリヂストンやフランスのミシュランが米国タイヤ企業を買収した結果、残された唯一の米国のタイヤ企業である。しかも、「ビースト」の名で知られる大統領専用車も当然グッドイヤー製タイヤを使用しているが、「これも替えろ」と叫んでいる。八つ当たりもいいところ。ほとんどお笑いだ。

米国大統領選の投票日は2020年11月3日。「中国コロナ」がアメリカを浸食するまでは景気も史上最高だったとコロナを甘く見たことを棚上げして中国のせいにし、「敗北」した場合にもホワイトハウスに居座る口実を次々に生み出すなど、これからもまだまだ何か起こりそうだ。

※この記事は、『大前研一のニュース時評』2020年8月29日を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学教授。