業界ウォッチ 2020年9月8日

教員のちょっと気になる「防災意識・防災食品市場」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「防災意識・防災食品市場」を取り上げてご紹介いたします。

毎年9月1日は「防災の日」ということで、各自治体で防災に対する啓もう活動や、メディアでの防災に関する情報が流れてきます。今年は、7月の九州豪雨あったことに加え、過去最大級といわれる台風10号など、災害に対する関心が高くなっています。コロナ禍における避難所で、いかに「密」を回避するかなども議論となっています。

「防災の日」をきっかけとして、各種の防災意識アンケート調査なども行われています。
確かに、ここ数年豪雨・台風などに関連した災害が多く見受けられます。地震の他に、海外では大規模な山火事などのニュースも目にします。


それでは、こうした災害への関心が高くなっている中で、人々の防災意識はどのように変化しているのでしょうか。防災対策はどの位行われているのでしょうか。防災に関連した商品(食品など)の市場規模はどのように推移しているのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。

まず、防災意識の変化として、どの位防災対策をしているのか、防災対策をしている人の割合とその推移を見てみます。「防災対策をしている」人の割合は、2018年は36.2%でしたが、19年に44%、20年は45.2%と、「対策をしている人」の割合が増えていることが分かります。ですが、まだ対策をしている人が半数(50%)に達していないことも分かります。

それでは「どのような対策をしているのか」、具体的な対策内容を見てみます。最も多かったのは「非常持ち出し袋の用意」で66.8%となっています。次いで、「一定量の食料・生活用品の日常的な備蓄(ローリングストック)」(61.9%)、「テレビや食器棚等への転倒防止器具の設置」(39.8%)、「緊急地震速報サービスの登録・利用」(35.4%)と続きます。


ちなみに、グラフには表示されていませんが「防災対策をしていない」人に「防災対策をしない理由」を聞いたところ、「具体的にどのような対策をすればよいか分からないから」という回答が49.3%と約半数を占めています。

次に、防災関連商品として、防災食品の市場規模を見てみます。15年は143.5億円でしたが、翌年177.6億円に拡大しますが、17年には159億円と落ち込みます。以降は、増加トレンドとなっており、24年には278億円規模になることが予想されています。

こうしてみると、防災対策をする人の割合が高くなるなど、防災意識が高くなっていることが分かります。また、こうした防災意識の高まりとともに、防災食品市場も伸びていることが分かります。

防災関連商品・サービスは日常使うことが少ないため、ビジネスとしては難しい面があります。企業によっては、アウトドア関連商品や、食品でのローリングストック化などによって、非常時以外でも使えるように工夫しているところもあるようです。

生活者としても、非常時の為だけに防災対策するだけでなく、日常利用できると防災対策のハードルが下がるのかもしれませんね。