業界ウォッチ 2020年9月28日

教員ちょっと気になる「地方銀行」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「地方銀行」を取り上げてご紹介いたします。

菅新首相誕生後、今後の菅新政権の政策に注目が集まっています。金融分野では、地方銀行の再編が注目されています。

菅氏が自民党総裁選に立候補した際に「地方の銀行は多すぎる」、「再編も一つの選択肢」といった発言をし、地域金融改革の必要性を主張してきました。

地銀業界内でも「従来型の預貸を中心とした銀行業務については(数が多すぎる)オーバーバンキングだろう」(全国地方銀行協会の大矢恭好会長)との声があるようです。地方銀行同士の統合・合併を独占禁止法の適用除外とする特例法が今年5月に成立しています。

確かに、地方銀行を取り巻く環境は厳しくなっています。コロナ禍で中小企業向の資金需要が増えるものの、低金利で利ザヤを稼げない状況が続いています。また、コロナの影響の長期化による、融資先の貸し倒れに備えた与信費用が増える可能性も高まっています。

それでは、地方銀行はどの位の数があり、集約が進んだ都市銀行などと比べてどのように推移しているのでしょうか。地方銀行の収益、特に貸し出しによる収益はどのように推移しているのでしょうか。また、最終利益はどのように推移しているのでしょうか。
実際に数字で確認してみたいと思います。

 いわゆる「地方銀行」(広義)には、「地方銀行」(狭義、以下、地銀)と「第二地方銀行」(以下、第二地銀)があるため、この両方の推移を中心に見ていきます。

まず業態別銀行数の推移を見てみます。「地銀」数は、1980年(3月末、以下同じ)は63行でしたが、そこからほぼ横ばいが続いています。85年に64行となり、2011年の63行になったのを除き、以降は64件で一定となっています。

「第二地銀」数は、80年は71行でしたが、そこから減少トレンドとなり20年には38行と半数近くにまで減少しています。

銀行数全体から見ると、地銀・第二地銀の割合が大きく、もともと数が多くなかった都銀・長信銀が統廃合・集約で減少したのに対し、特に地銀は横ばいで推移し、対照的なことが分かります。

 次に、銀行の売上高に相当する「経常収益」の推移を見てみます。「地銀」の経常収益は、05年(3月末、以下同じ)が4.6兆円でしたが、リーマンショック前の08年(3月末)の5.5兆円まで増加トレンドとなりますが、以降は減少トレンドとなり、12年の4.6兆円以降は概ね横這いとなっています。


このうち、貸出金利息収入を見ると、09年に約3.2兆円に達して以降は、減少トレンドが続いています。
 第二地銀は、経常収益、貸出金利息収入ともに08年以降は減少トレンドが続いています。

 また、地銀・第二地銀の当期純利益の推移を見てみると、いずれもリーマンショック直後の09年(3月期)にマイナスに転じています。この年の地銀は-699億円、第二地銀は-3,755億円と、第二地銀のマイナス額の方が大きくなっています。

地銀は、そこから回復し17年には7950億円に達しますが、以降は減少トレンドに転じ、20年は約5900億円となっています。

第二地銀は、マイナスから回復に転じ、13年に2500億円に達しましたが、以降は現象トレンドとなり、20年は723億円となっています。

こうしてみると、これまで第二地銀は統廃合で数が減ってきたのに対し、地銀数はそのままで、地銀の売上・貸出金利収入が減少、利益も減少トレンドにあることが分かります。

地銀の再編は、地域金融機関としての使命・役割論の他に、競争政策上の観点からの銀行数、システム面から見た銀行数の妥当性など様々な観点から検証して進める必要があると思います。そのためにも、現状の数値を把握しておくことは大切になりそうですね。

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