業界ウォッチ 2020年10月6日

教員ちょっと気になる「外食産業の売上動向」



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

今週は「外食産業の売上動向」を取り上げてご紹介いたします。

政府の外食需要喚起策である「Go Toイート」が10月から始まりました。吉野家HDなどの外食大手も参加へ向け調整を進めているそうです。この制度自体は、中間業者を経る必要があるなど、手続きが煩雑なため批判等もあるようですが、新型コロナの影響によって落ち込んだ客足の回復が期待されています。

確かに、飲食店・外食産業は新型コロナによって営業自粛要請などの影響もあり、客数や売上高の減少に苦しんでいる店舗が多数存在するという話を聞きます。また、業種別倒産動向を見ても、飲食店の倒産数が上位に位置付けられています。

それでは、外食産業の売上動向は、新型コロナ前とその後でどの位の変化があったのでしょうか。また、緊急事態宣言(4~5月)の前後で何か変化があったのでしょうか。業態別に見ると、どのような違いがあるのでしょうか。実際に数字で確認してみたいと思います。

教員ちょっと気になる「外食産業の売上動向」

 まず、外食産業全体の売上動向(2019年8月~20年8月、対前年同月比)を見てみます。19年8月から20年2月までは概ね100%前後で、ほぼ横ばいで推移しています。

その後新型コロナの影響で大きく落ち込み、4月には60.4%の水準まで落ち込んでいます。4月以降は回復傾向にありますが、直近データの8月時点でも84%と、依然として前年の水準よりも2割ほど低い状態にあることが分かります。

ファーストフードは、同様に20年2月まではほぼ横ばいで、4月に84.4%と落ち込みましたが、以降回復傾向となり8月には96.6%となっています。
ファミリーレストランも、20年2月まではほぼ横ばいでしたが、4月に40.9%と大幅に落ち込みました。以降回復傾向にあるものの8月時点では75.1%となっています。

次に、パブレストラン/居酒屋業態を見てみます。こちらも同様に20年2月まで対前年比100%前後ではほぼ横ばいでしたが、4月には8.6%と激減しています。以降回復しつつあるものの8月時点で41%にとどまっています。

ディナーレストランも同様なトレンドですが、20年4月に16%と激減し、以降回復するも8月時点では65.1%にとどまっています。喫茶もほぼ同様のトレンドで、20年4月に27.6%と激減し、以降回復するも8月時点では67.8%にとどまっています。

 こうしてみると、ファーストフードはテイクアウト業態も統計に含まれており、フードデリバリーの取組などの努力もあり、他業態よりも落ち込みが小さいことが分かります。

 一方、パブレストラン/居酒屋、ディナーレストラン、喫茶はいずれも4月時点の落ち込み方が甚大で、その後の回復度合いも前年の7割に達していません。
特にパブレストラン/居酒屋業態の打撃は顕著なものとなっていることが分かります。

 お客さんが狭いところで、お酒を飲んで、ワイワイ語り合うような居酒屋業態は、新型コロナの影響がある中では、なかなか集客が難しいのかもしれません。「Go Toイート」がどの位機能するのか分かりませんが、お店によっては感染症対策をするだけではなく、業態の在り方も考えていく必要があるかもしれませんね。