業界ウォッチ 2020年10月27日

教員ちょっと気になる「米国在宅フィットネス企業」

執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)


今週は「米国在宅フィットネス企業」を取り上げてご紹介いたします。

米国では在宅フィットネスビジネスが伸びているそうです。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、従来の店舗型フィットネスクラブは厳しい状況にあるようですが、ネット経由で配信される動画コンテンツなどを活用して、エクササイズするスタイルが広まってきているようです。


 その中でも、注目を集めている米国のフィットネス新興企業としてペロトン・インタラクティブ社(Peloton interactive、以下ペロトン)があげられます。同社は、室内用自転車型トレーニングマシン、室内ランニングマシンを販売し、オンラインコンテンツとしてのトレーニングサービスを提供しています。


 2019年9月にNASDAQに新規上場し、ハードウェア販売とコンテンツサブスクリプションを組み合わせたビジネスモデルなど注目され、「フィットネス界のアップル」とも称されて期待されていました。そこに、新型コロナが更なる追い風となり、業績が伸びているようです。


 確かに新型コロナ感染拡大後、オンラインフィットネスの注目が集まっていましたが、こうしたビジネスで実際に売上が上がっているのでしょうか。伸びているとしたら、どの位伸びているのでしょうか。また、株価はどのように推移しているのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

【使用図表】米国在宅フィットネス企業

 まず米ペロトンの売上高の推移を見てみます。2017年6月期は2.2億ドルでしたが、そこから上昇トレンドで20年6月期には18.3億ドルにまで拡大しています。その売訳を見ると、大半が機器販売で、17年6月期の1.8億ドルから20年6月期の14.6億ドルに拡大しています。サブスクは、17年6月期の0.3億ドルから、20年6月期の3.6億ドルへと拡大しています。

次にコロナ禍で変化があったかどうかを見るために、四半期の推移を見てみます。


売上高は、18年9月は1.1億ドルで、19年3月(3.2億ドル)まで増加トレンドとなっています。19年6月(2.2億ドル)で一旦落ち込みますが、19年12月(4.7億ドル)から増加トレンドとなり20年6月に6.1億ドルとなっています。


純利益の推移をみると、18年9月の-0.5億ドルから概ね横這い推移していますが、20年6月に0.9億ドルと、初めて黒字に転換しました。

今年に入ってからの株価の推移(2020年第1週末株価=100)を見ると、20年3月上旬に一度70台にまで落ち込みますが、以降は増加トレンドとなり、10月12日週に最高値の468となります。


比較の為にフィットネス・ヨガウェアのLululemonの株価推移をみると、3月中旬に一旦70台に落ち込みますが、そこから上昇トレンドとなっています。6月末にLululemon社は、フィットネススタートアップの米ミラー社の買収を発表し、8月下旬に最高値160となりました。以降増減を繰り返しています。ちなみに、米ミラーは、コンテンツの配信にネット接続した「スマートミラー」の販売+コンテンツ配信サービスを行っています。

こうしてみると、米国の在宅フィットネスビジネスでは、機器販売+コンテンツ配信のビジネスモデルで収益を上げるビジネス展開されていることが分かります。
日本では、室内自転車型トレーニングマシンや室内ランニングマシンを置けるような住宅事情ではないため、米国と同じスタイルは難しいかもしれません。とはいえ、機器(ハードウェア)販売+コンテンツサブスクリプションで収益を上げるというビジネスモデルは参考になりそうですね。