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大前研一メソッド 2020/11/30

米国産牛肉が豪州産よりも現在は買い得?

米国産牛肉が豪州産よりも現在は買い得?
大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

食品スーパーで豪州産牛肉と米国産牛肉を比べた場合、米国産が現在は割安です。農畜産業振興機構によると、牛丼などに使う豪州産牛バラ肉(冷凍品)の卸値は2020年10月中旬時点で1kg当たり670円前後です。

一方、米国産牛バラ肉(冷凍品)は同625円前後と豪州産より7%ほど安く、割安感が強まっています。対日牛肉輸出量で米国は2003年以来、豪州に首位を奪われていましたが、米国の首位奪還が目前です。BBT大学院・大前研一学長に聞きました。


関税率変更で米国産牛肉に勢い

2020年11月の日経新聞に「牛肉輸入、米国産に勢い」と題する記事があった。

【資料】牛肉輸入、米国産に勢い 関税率低下で産地変更も豪州産は供給減 シェア逆転も視野

新型コロナウイルス禍で牛肉の輸入量が低調な中、米国からの輸入量は増えているというものだ。

2020年1月に発効した「日米貿易協定」で、輸入関税率が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の水準まで下がり、関税差で生じていた他国産牛肉の割安感が薄まったからだという。「日米貿易協定」の発効で米国産牛肉の関税率は38.5%から26.6%に低下。現在25.8%まで下がり、TPP参加国と同水準となった。

財務省の貿易統計によると、2020年の4〜9月の牛肉の総輸入量は31万4000トンと前年同期より4.8%少なかった。その中で米国は4.4%増、豪州は12.9%減だった。輸入シェアも米国が42.7%になり、首位の豪州の43.4%に肉薄している。

2003年にBSE(牛海綿状脳症)が発生して、米国から牛肉が輸入できなくなったとき、その分を豪州が肩代わりし、それ以降、米国は豪州にシェア首位の座を奪われている。約20年ぶりとなるシェア首位奪還に向け、最近はドナルド・トランプ大統領のゴリ押しもあった。

豪州産牛肉の価格は高止まり

一方、豪州は、新型コロナの発生源の調査を求めた件や香港問題などを巡って中国との関係が悪化し、中国は豪産食肉の輸入を一部停止してブラジル産に切り替えている。両国の対立は、経済分野から人権や報道の自由、安全保障にも広がり、牛肉問題もそう簡単には解決しない状況だ。

また、豪州は近年、干ばつでエサとなる牧草の育ちが悪く、生産者は出荷を早めた。この結果、足元の干ばつの影響で牛の生産量が減り、高値傾向が続いた影響もある。豪州としては、米国に日本を奪われたら大変だ、ということで、巻き返しに必死になっている。

米国産はコーンなど穀物で育ったグレインフェッドビーフだが、豪州は牧草を食べて育ったグラスフェッドビーフという肉が主流。20年ぐらい前は、日本の主婦の間で「豪州の肉は独特のニオイがして嫌だ」という人も多かった。しかし、最近では日本人好みの味も研究されて、豪州産の赤身の牛肉は見直されている。

そういう点で、豪州産は一つのポジションを日本にも築き上げたと思う。すべての輸入牛肉が米国になるということはない。

アルゼンチン産牛肉が日本人の口に合う

赤身部分が多く、肉本来のうまみが感じられるという意味では、私は広大な牧草地で育てられたアルゼンチン産の牛肉が一番おいしいと思っている。これほど柔らかい赤身肉は、日本では阿蘇の「あか牛」、岩手の「短角牛」ぐらいしか思い浮かばない。

南米で広まった家畜伝染病の口蹄疫ウイルスによる感染症問題も、2006年に解決してから長い時間がたち、アルゼンチン産を輸入してもOKということになった。

アルゼンチンは牛肉の1人あたり消費量が日本の10倍。生産量も米国、ブラジル、EU、中国、インドらに次ぐ有数の牛肉大国。豪州と同様、グラスフェッドビーフだ。

ネットでブエノスアイレスの肉料理の紹介ページをめくってみれば400件近いステーキハウスが出てくる。クリントン大統領が何回か来たという、ある店に私も2度行ったが、日本人の口にも間違いなく合うのではないかと思う。

※この記事は、『大前研一のニュース時評』 2020年11月21日 を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学教授。