業界ウォッチ 2020年12月1日

教員ちょっと気になる「買収ターゲットとされるSlackの業績」

今週は「買収ターゲットとされるSlackの業績」を取り上げてご紹介いたします。

先日(11/25)、米ウォールストリートジャーナル紙で、CRMソフトの米Salesforce.comが、チャットツールの米Slack Technologiesの買収を交渉しているとの報道がありました。


新型コロナの影響で在宅勤務が広がり、各種のクラウドサービスが取り入れられる中、米国では同市場を巡った再編の動きとして注目を集めているようです。



確かに、在宅勤務・リモートワークが広がると、チャットやビデオ通話などのコミュニケーションツールの重要性が高まっています。ZoomやマイクロソフトTeams等のユーザーが拡大しているという話題も、新型コロナ拡大の当初はよく見かけました。最近では、当然のこととして、話題になる回数も少なくなってきたようにも思います。


その中で、チャットツールとしてTeamsよりも前からエンジアを中心に利用され、最近ではビジネス全般のコミュニケーションツールとして広まりつつあるSlackが買収対象となるのはどういった背景があるのでしょうか。


Slackの業績がどのように推移しているのか、同じコロナ禍で在宅銘柄として一気に広まったZoomと比較するとどのような違いがあるのでしょうか。買収する側のSalecforceと、Slackの時価総額はどの位の違いがあるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。


 まず、SlackとZoomの売上高の推移を見てみます。四半期で推移をみると、2018年4月期は、Slackは約8100万ドルでしたが、そこから増加トレンドで推移し20年7月期では約2億1600万ドルへと増加しています。Zoomを見ると、18年4月期が約6000万ドルとSlackを下回っていましたが、そこから増加トレンドで20年1月にSlackを抜き、以降は新型コロナの影響で急増し、20年7月期は約6億6400万ドルと、Slackと大きな差がつきました。


 最終利益の推移をみると、Slackは18年4月期以降全て赤字となっており、19年7月期に3億6000万ドルの赤字を出しましたが(※)、以降回復したものの赤字状態が続いています。(※障害によるサービス停止に関連して当該期にクレジットポイントを発行したため)


 一方、Zoomは18年4月期に-134万ドルの赤字でしたが、そこから微増・微減が続き、ほぼ横ばい状態でしたが、20年1月期に約1400の黒字となり、以降新型コロナ特需で急増し20年7月期には186億ドルの最終利益となっています。

次に、Slack、Salesforce、Zoomの時価総額の推移を見てみます。
Slackは、今年の1月の最初の週(1/4)時点では124億ドルでしたが、以降ほぼ横ばい・微増という状態で、Salesforceによる買収報道があって少し株価が上昇し11月28日時点では232億ドルとなっています。


Zoomは、1月の初週時点では186億ドルでしたが、以降増加トレンドで、20年7月期の業績予測および発表で大幅な増収増益となったことで、株価・時価総額も大きく伸びています。


Salesforceは、1月の初週時点で1474億ドルでしたが、3月の新型コロナの影響で、企業向けソフトウェアということで一度落ち込みますが、以降は企業のDX推進銘柄ということで上昇トレンドとなり、11/28時点では2253億ドルとなっています。



こうしてみると、Slackはコミュニケーションツールツールとして非常に使い勝手がよいものの、MicrosoftのTeamsに需要を取られ、ビデオ通話機能の弱さもあり、新型コロナの追い風に乗り切れなかったことが分かります。また、Slackは収益面でも赤字状態が続いており、時価総額も横這いということで、企業向けソフトウェアを強化したいSalesforceからすると、買収のターゲットとしたくなることも納得できます。


実際に買収が決まるかどうかは分かりませんが、Salesforceが買収するとビデオ機能を強化するだろうという報道も見かけます。Teamsには無いSlackの使い勝手の良さも多くあるので、ユーザーとしては、より良いツールとして進化してもらえると有難いですね。