業界ウォッチ 2020年12月22日

教員ちょっと気になる「食パンの消費動向」

今週は「食パンの消費動向」を取り上げてご紹介いたします。

今年の10月下旬に、横浜でATMコーナー跡地に食パン専門店が出店したことがメディアで取り上げられ、注目を集めました。キャッシュレス化が浸透し、銀行のATMコーナーが閉店し、そこに近年人気となっている高級食パン専門店が、コロナ禍で住宅地に出店場所を求めて出店したことが背景にあるようです。


確かに、コロナ禍で外食機会が減る一方、パン屋・ベーカリーに人が集まるところを見かけたり、省スペース型の高級食パン専門店に人が並ぶ姿を見かけたりすることが多くなりました。


それでは、食パンの消費支出はどの位伸びているのでしょうか。他のパンと比べて食パンの消費は伸びているのでしょうか。また、食パン消費支出の多い地域・都市はどこなのでしょうか。食パンの市場規模と食パン専門店の市場規模はどの位の差があり、どの位の伸びの違いがあるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

 まず、「食パン」と「他のパン」の家計消費支出(月額、二人以上世帯)の推移を見てみます。なお、ここでは季節変動によるばらつきを馴らすために12カ月移動平均を用いて推移を見てみます。


「食パン」の消費支出は、2006年1月時点では739円/月でしたが、そこから横這い・微増トレンドで推移していますが、13年後半から上昇トレンドとなり、14年4月に800円/月を超え、20年10月には925円/月となっています。


「他のパン」の消費支出の推移をみると、06年1月は1623円/月で、そこから10年ごろまで増加トレンドで、10年~14年はほぼ横ばいトレンドとなっています。15年ごろから再び増加トレンドとなりますが、そこから増減を経て20年3月に最高値の2010円/月となりますが、以降下降トレンドとなっています。

次に、食パン消費支出額の上位都市と下位都市を見てみます。食パン消費支出額のトップは堺市の1103円/月(20年10月)で、次いで鳥取市(1067円/月)、奈良市(1063円/月)、神戸市(1025円/月)と続きます。下位の都市を見ると、最も少ないのは山形市で602円/月となっています。次いで、長野市(609円/月)、秋田市(630円/月)、宮崎市(680円/月)と続きます。

 更に、食パンの市場規模を見てみます。「食パン専門店(小売りベース)」の市場規模は19年(209億円)から20年(255億円)で約22%の伸びが予想されています。「食パン(小売りベース)」の市場規模は、19年(3406億円)から20年(3480億円)と約2.2%の伸びが予想されています。

こうしてみると、食パンブームが広まりだした2018年ごろから食パンの消費支出が増えており、今年3月の新型コロナ感染拡大以降も消費が伸び続けていることが分かります。「他のパン」の支出が新型コロナ以降落ち込んだ状況とは対照的です。


また、都市別で見ると、関西・中国地方の都市、関東の都市が上位に来ており、東北の都市が下位となっていることが分かります。食パン専門店は市場規模自体まだ小さいですが、伸び率が高いことから、今後も伸びていくものと考えられます。

新型コロナの第3波などの広がりから、在宅勤務、外食自粛等によって自宅で過ごす時間が長くなることが予想されます。そうすると、今後も更に食パン消費が伸びるものと考えられそうですね。