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大前研一メソッド 2021/03/15

ヒトラー化する習近平国家主席野望


大前研一(BBT大学大学院 学長 / BOND大学教授 / 経営コンサルタント)
編集/構成:mbaSwitch編集部

国家主席であり中国共産党総書記の習近平氏が率いて、全体主義を強めている中国は、台湾の再統一を狙ってくるでしょう。習近平氏は2021年1月に「一国二制度」により台湾を統一する方針を強調しています。

習近平氏の野望を打ち砕くためには、「米国vs中国」という図式ではなく、「習近平vs不満分子」の間に楔を入れるべきです。二つの論文から、BBT大学院・大前研一学長が習近平氏の野望とその野望を打ち砕く戦略を紹介します。

習近平国家主席は、台湾との再統一を果たし皇帝を目指す

豪州のケビン・ラッド元首相が、米国の外交問題専門誌「フォーリン・アフェアーズ」で、「中国の習近平国家主席は、台湾との再統一を果たすことで故毛沢東国家主席並みの地位を獲得しようとしている」と自説を発表した。米誌「ニューズウィーク」が伝えている。

【資料リンク1】米中衝突を制御するには —— 対立のエスカレーションと戦争リスク

【資料リンク2】ラッド元豪首相の警告「習近平は毛沢東になりたがっており、しかもアメリカを甘く見ている」──米外交誌


ラッド氏は続けて、「そのために今後10年で米軍を上回る軍事力を手に入れ、台湾周辺からの米軍排除を考えている。一方、米国も対抗するため同盟国を団結させる方針である。衝突を回避するためには、互いに部分的に譲歩する必要がある」と警告している。

ラッド氏は北京語にも堪能で、かつては親中派の代表と思われていた。首相時代には、中国の反発を考慮して日豪共同宣言条約化の先送りをするなど、日本をコケにして中国に寄り添っていた。

それがいまは「習近平氏はおかしい。2035年まで政権を維持し、“永久皇帝”になって毛沢東になりたがっている」と言うようになった。中国情勢に詳しいだけに、ついに親中派の右代表もこういう考えになったかと感慨深い。

私は「習近平氏は毛沢東というより、ヒトラー化している」と考えている。香港や台湾に対する戦略が、第2次大戦のナチス・ドイツのポーランド侵攻の前夜と似ているからだ。本人は認めたくないだろうが。

中国の軍人が執筆した論文を読んでいると、「戦争軍備においては、1位以外はない」「2020年代に世界一の軍備、世界一の科学技術力、世界一の工業生産力を持ち、1人当たりのGDPも含め、先進国の仲間入りというだけではなく、あらゆる面でトップに行く」などと書かれている。こういった世界制覇の企てに、ラッド氏もようやく気がついたのだろうか。

「習近平vs不満分子」の間に楔を入れよ

もう一つ、米国の超党派シンクタンク「大西洋評議会」の「米国の新たな対中戦略に向けて」と題する報告書も反響を呼んでいる。情報サイト「現代ビジネス」が「習近平も青ざめる。中国共産党内部分裂を指摘したヤバすぎる論文の内容」と紹介している。

【資料リンク3】習近平も青ざめる…中国共産党「内部崩壊」を指摘した“ヤバすぎる論文”の内容

この論文の主旨は、「中国共産党を相手にするのではなく、習近平国家主席個人に焦点を絞って、内部の不満分子との亀裂を深める戦略の方が有効」とするものである。

つまり、先のラッド氏の言葉を借りれば、「毛沢東化している習近平氏」のことを快く思っていない人たちが中国内部に存在するので、習近平氏の孤立化をはかる方が効果的だとしている。

これも私は一理あると思う。全体主義国家の中国だが、すべて意見が一致しているとは限らない。違う意見の人も多数いるはずなので、ここで分断を加速するような戦略を練らなければいけない。「米国vs中国」という図式ではなく、「習近平vs不満分子(その他の意見の違う中国国内の人たち)」の間に楔を入れるべきだとしている。

かつての鉄のカーテンや米ソ冷戦の時代も、基本的にはスターリンの孤立化をはかるべきだったという話である。匿名の論文になっているが、「中国問題を扱うのに、十分な専門性と経験を持つ元米政府高官」が執筆したと言われる。日本もこのくらいのことを書く人が出てきてほしいなと思う。

※この記事は、『大前研一のニュース時報』 2021年2月27日を基に編集したものです。

大前研一

プロフィール マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997-98)。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公共政策大学院総長教授(1997-)。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長。ビジネス・ブレークスルー大学学長。豪州BOND大学教授。