業界ウォッチ 2021年5月25日

【データから読み解く】中食(惣菜)市場はコロナ禍で拡大したのか?縮小したのか?

今回は「中食(惣菜)市場」を取り上げてご紹介いたします。

先日、一般社団法人日本総菜協会から2020年の中食(惣菜)市場に関する調査結果(速報値)が公表されました。同速報値によると、2020年の中食(惣菜)市場規模は9兆8195億円(前年比4.8%減)と、新型コロナウイルス感染症の影響を受け2009年以来11年ぶりに前年を下回ったとのことです。

確かに、新型コロナウイルスの影響で外出して買物すること自体は減っているとは思います。しかし、食品スーパーでの食材の購入や、自宅で食事する機会が増えていることもあり、中食・惣菜も増えているのではないかと考えていたのですが、実際には市場自体は縮小した結果となっています。

それでは、市場の落ち込み幅は、長期的に見るとどの位の程度だったのでしょうか。また、業態別にみて落ち込みの大きい業態、伸びている業態に違いがあるのでしょうか。実際に数字を見て確認したいと思います。

惣菜市場は20年に9.82兆円と前年下回る。CVS、専門店他、総合スーパー、百貨店で前年割れ


まず、惣菜市場規模の長期推移(2003~2020年)を見てみます。2003年は6.97兆円と6兆円を下回っていましたが、そこから増加トレンドで08年に8.2兆円に達しています。翌09年は8.05兆円と前年を下回りましたが、以降は再び増加トレンドとなり、17年には10兆円を突破します。19年に10.3兆円と最高値に達しますが、20年は前述のように9.82兆円と前年を下回る結果となりました。20年の市場規模は、4年前(2016年)の9.84兆円とほぼ同規模となっています。

次に、業態別の市場(売上)規模推移をみてみます。
まず「CVS」をみると、03年は1.9兆円でしたが、そこから緩やかに増加トレンドとなります。09年に一度前年割れした以降は、増加トレンドが加速し19年に3.4兆円と過去最高値に達しますが、20年は3.1兆円と前年割れ(前年比-6.4%)となりました。


「食品スーパー」を見ると03年は1.5兆円でしたが、そこから増加トレンドが続き20年には2.8兆円となっています。唯一の対19年比で伸びた(前年比0.8%増)業界となっています。
「専門店他」は、03年が2.3兆円で、そこから08年(2.9兆円)まで増加トレンドですが、09年に前年割れ(2.8兆円)した以降は概ね横這い傾向が続き、20年(2.7兆円)は前年比-5.6%の落込みとなりました。
「総合スーパー」は、03年(0.84兆円)以降概ね横這い(微増)トレンドで続きましたが、20年(0.88兆円)は前年比-8.7%の落込みとなりました。
「百貨店」は、03年(0.45兆円)以降減少トレンドが続きていましたが、20年(0.29兆円)は、前年比-17.9%と大幅な落ち込みとなりました。

外食店の出前市場は前年比大幅増

ここで、「中食」の定義を改めて確認すると、「中食とは、惣菜店やコンビニエンスストア・スーパーなどでお弁当や惣菜などを購入したり、外食店のデリバリーなどを利用して、家庭外で商業的に調理・加工されたものを購入して食べる形態の食事をさします。(※)」とあります(※:厚生労働省eヘルスネットより)。そこで日本総菜協会の調査では、外食店のデリバリーが含まれていないため、外食店のデリバリーの数字を確認してみたいと思います。外食店の出前(デリバリー)市場を見ると、20年の売上高が0.63兆円と対前年比49.7%増と大幅に伸びていることが分かります。

こうしてみると、「食品スーパー」、「外食店の出前」以外の業態全てが20年の売上高が前年比でマイナスとなっていることが分かります。こうしたことから類推すると、CVSは都市部オフィス街でのランチ需要や、商業地の百貨店などは外出自粛・仕事帰りの食材買物需要が大きく落ち込んだ可能性が高そうです。


こうした業界・市場の構造変化が起きている市場動向を確認するには、一つの統計調査結果だけでなく、複数の情報源を見ながら、実感値とのすり合わせをすることが必要になりそうですね。

<出展>
2020 年惣菜市場規模 速報 9 兆 8,195 億円

2021年版惣 菜 白 書-ダイジェスト版-

<外食・中食 調査レポート>2020年計の市場動向、外食・中食売上は18.3%減 出前市場規模は50%増の6264億円

中食の選び方 /e-ヘルスネット

教員のちょっと気になる「中食の市場規模」