MBAダイジェスト 2020年2月13日

卒業研究(4)”マイルストーン”を与えてくれる担当教員の卒研指導

『MBAダイジェス』シリーズでは、国内初・最大級のオンラインMBAである「BBT大学院」、ならびに2つの国際認証を持つ「BOND-BBT MBAプログラム」の修了生が、両校で学ぶMBA科目のエッセンスをまとめ、わかりやすく紹介していきます。将来的にMBAの取得を検討している方や、MBAの基礎知識をインプットしたい方はご活用ください。


 
執筆:村西重厚(BBT大学院MBA本科修了、データ・サイエンティスト株式会社 エグゼクティブ・ディレクター)
対象科目:卒業研究(門永宗之助 教授、他)

卒業研究の連載、第4回目です。

今回は、研究内容をBBT大学院の講師からレビューを受ける、というステップについてご紹介いたします。前回も述べたように、卒業研究は個人作業であり、テーマによって取り組み方法は様々です。本連載では筆者の個人的な体験を元にしており、BBT大学院における卒業研究の「正解」ではないことは予めご理解ください。

事業計画書 ‘バージョン1’ のレビュー

卒業研究は、BBT大学院の講師陣からマン・ツー・マンで指導を受ける機会があります。講師陣はBBT大学・大学院で講座を持つ、一流のプロフェッショナルばかりです。考案したビジネスモデルについて、このような先生方から直接レビューを受けることができます。

私の研究テーマは「モノづくりの新しいプラットフォームの構築」でした。ビジネスモデルは、モノづくりのプロセスを構成するデザイナー、エンジニア、生産者、マーケターなどをネット上のプラットフォーム、いわゆるクラウドに集め、消費者が望む商品を開発・製造する仕組みを運営する、という内容でした。

担当指導員からレビューを受けるにあたり、必要な投資金額、売上・利益の確保、成長モデルなどを数値を含めて具体的に設計をしました。ファイナンス、マーケティング施策、必要な人員など、これまでの科目で学んできたことを総動員して事業計画書の ‘バージョン1’ を作り上げました。

事業計画書を元に説明した結果、担当指導員からは、

「ビジネスモデルの合理性は理解したので、このビジネスが本当に社会に必要とされているのかを、業界のプロの目線で評価を受けてみては」

と提案を頂きました。

確かに、その段階ではモノづくり現場の話はあえて聞いていませんでした。
プロから価値ある意見を伺う為には、自分のアイデアを一定の水準まで高める必要があると考えていたからです。先生からのレビュー元に修正した事業計画書を携えて、プロへのインタビューを計画しました。

「生の厳しい声」を聞くということ

プロにインタビューをするためにSNSなどを活用した結果、2組のエキスパートからご意見を頂ける機会を得ることができました。
インタビューの結果は非常に厳しいものでした。

1つ目のアドバイスは、ヒット商品を手がけたことがある「プロダクトデザイナー」の方から頂けました。
指摘のポイントは、

・作り手の強い思いが製品に備わってこそ、強い差別化が可能になる
・薄い思いでは、本当にエッジの効いた製品は生まれてこないのでは

という内容でした。

ネット上の関係だけでは、作り手の強い思いは醸成されないのでは?ということです。そのメッセージにはモノづくりの豊富な経験に裏打ちされた力がありました。

2つ目は、「モノづくり企業の経営者」からのご意見でした。

こちらのインタビューでは、その会社の出資者とのミーティング時に設定して頂けました。つまり、投資家からのご意見が頂けることになったのです。
突然ベンチャーキャピタルの方にプレゼンすることになり、大変緊張したことを覚えています。

結果、経営者、投資家からの指摘は、

「モノづくりに重要なことは、手段ではなく目的である。」

ということでした。
何を作りたいかを真剣に考えるべきであり、どうやって作るかは、売れてから考えれば良い、ということでした。
もともとの私のアイデアは「仕組みづくり」をベースに考えていました。

しかしインタビューの結果、

・売れるモノを作るためには、人々が本当に必要とすべきものを作ること
・何が必要かはクラウドからではなく、一人の強い思いが突破できる
・売れるものがわかれば、大抵のものは製造可能である

という事がわかりました。

とてつもない学び

投資家へのインタビューの際に頂いた、

「なぜあなたがこのビジネスをやりたいのか、そこの必然性が欲しいです。投資する立場から申し上げると、<なにがあってもやり遂げる>という強い意志を感じ取ることが、投資の意思決定の重要な要素です」

という言葉が今でも印象に残っています。これは前回までのメルマガで、「テーマ設定が重要」という話にも通ずる部分でしょう。

これらのアドバイスは卒業研究だけでなく、自分の職業感を考えるという意味でもとても貴重でした。私の説明を本気で聞いて頂き、心のこもったアドバイスを頂けた方々には本当に感謝しております。この場を借りて改めてお礼を申し上げたいと思います。

指導はマイルストーンと捉える

さて、ここまでの流れでおわかりのように、指導において最も価値があることは、実は「指導される」という事実そのものでした。

先生方はビジネスのプロではありますが、卒業研究の内容そのものについては、研究している当人が最も深く内容を知っているはずです。自分の頭の中にあるプランを、誰にでもわかりやすく説明するために、「指導」というマイルストーンを置くことで、ビジネスのプロである先生方に評価して頂けるレベルに到達できます。そしてその内容は、専門家からもしっかりとしたご意見を頂けることに繋がります。

私のプランは結果として、業界のプロからは厳しい意見を頂くことになりましたが、厳しい意見を頂くことができるレベルに達した理由は「指導」というマイルストーンが存在したからと考えています。

さて、今回のアドバイスをまとめると、私のビジネスモデルには合理性はあるが、市場性が薄い、ということでした。 ‘バージョン1’ のままでは卒業研究として進みそうにありません。

次回は、厳しい指摘内容を踏まえた次のアクションについてご紹介いたします。


<< 第3回へ   第5回へ >>

村西重厚

BBT大学院本科 修了生
データ・サイエンティスト株式会社 エグゼクティブ・ディレクター
一般社団法人起活会 代表理事
1972年 兵庫県神戸市出身
工学部機械科卒業後、メーカーで生産技術部門に従事。
その後、営業部門を経て新規事業部門でWEB事業を立ち上げる。
新規事業の立ち上げ時に経営知識の必要性を感じ、2013年にBBT大学院に入学。
2015年MBA取得。MBA取得後、ベンチャー企業に転職し、営業、マーケティング、資金調達などに携わる。
2017年より、検索ビッグデータ分析を元に企業戦略の立案・推進に携わる一方で、一般社団法人起活会を立ち上げ、起業家支援を行っている。
趣味は登山、クライミング、ギター。

※BBT大学院MBAプログラムの受講体験談はこちら